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痛みが身体を襲うと脳から何かが分泌されて痛みを和らげてくれるらしい。
脳内麻薬とか言ったかな。
今の状況と似ているかもしれない。
夏生の目に映る自分を見ながら、そこはただの身体の一部なんだと、ただの肉なんだと言い聞かせて正気を保った。
控えめに盛られた肉だけど。
散々「貧乳」って言われた肉だけど。
そういえば夏生の手は乗ったまま微動だにしない。
もしかしたら想像以上に貧相で呆れているのか驚いているのかガッカリしているのか――
あああもう無理もう無理。
脳内麻薬っぽいものが出てるフリなんて、もう無理…!
忍耐の限界に達して身を捩ろうとした時、夏生の雰囲気が急激に和らいだのに気付く。
夏生はTシャツに突っ込んでいた手を引き抜くと、ゆっくりと身体を起こした。
「……」
あまりにも呆気なく手を引き抜かれて呆然と寝転がっていると、夏生が無言で手を引いて起こしてくれる。
その顔はすっかりいつもの夏生に戻っていた。
「…頭突きされる覚悟してたんだけど」
その手があったか、なんて一瞬思いつつも、「嫌悪感しかなかったら言って」なんて言われたら何も出来ないじゃないかと夏生を無言で睨む。
それを見て夏生が笑った。
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