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「これから毎日覚悟しとけよ」
「…なんの」
「それなりのことをする覚悟」
「……」
「オイ。普通頬染めるだろ。なんで青くなってんだよ」
…真顔を貫いたはずだけど、内心を見抜かれたらしい。
こんな事続けられたら心臓がもたない。
それに、あの目をした夏生にはちょっとまだ抵抗がある。
「えーと…でも…」
結局のところ、わらしのことがあるんだから恋人同士とはいえここまで進むだなんて思いもしなかった私は、情けないことに何の覚悟も出来ていないのだ。
せめてもっとゆっくり。
今の気持ちが落ち着いてから、牛歩…ううん、かたつむりの移動速度くらい。
そうだ、かたつむりがいい。
「顔に出すぎ」
「あ痛っ」
指で鼻を弾かれて肩が跳ねた。
鼻を押さえ、楽しそうに笑う夏生に非難の目を向ける。
「お前みたいなヘタレた奴はさっさと免疫つけとかないと。変に時間置いたら意識しすぎてフェードアウトしてくだろ」
「そ、そうかな」
「そうだよ。まあ、一回くらいは得意の頭突きを受けてやってもいいけど」
声を上げて笑う姿は子供の頃の夏生と同じで、今の空気を解そうとしてくれているんだとわかると私の緊張も緩んだ。
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