中、染めし

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  肩までの髪の女が俺の隣に座り、眉を垂らしながら窓の外を覗く。 …この女に植え付けた筈の恐怖は、知らぬ間に薄れているらしい。 世話役の男は能天気な女と違い、警戒心露わに俺を睨み付けていた。 そんなに大事な女なら、この座敷に近付けさせなければ良いものを。 「ライトアップとか出来ればいいんだけど、お客様に不審に思われるのも困るから」 「…ライトアップ?」 「うん。全体に灯りを当てて、夜でも景色を楽しめるように…」 「無粋な事をするな。何も見えぬ夜などありはしない」 「そうなの?妖怪って凄いね」 星や雲、音や風の匂いの話をしていたつもりなのだが…まぁどうでも良い。 「これから紅葉が始まったりして、どんどん寒くなるよ」 そう言われて初めて気付いた。 贄の肌が、随分冷えている。 …それに、先程から感じている僅かな匂い。 懐かしい匂いに俺の中の何かが騒いでいた。 「寒い?羽織り持ってくるね」 「…いらん」 「わらしは良くても冬馬くんが風邪ひくでしょ」 女が座敷を出て行くと世話役の男が小さく溜め息を吐き、俺の前に乱暴に座る。 「空調を最小限に抑えた」 「空調?」  
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