悠久の刻

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  長い長い、廊下の先。 いくつかの部屋を通り過ぎた一番奥の間に、二つの人影が揺れた。 「…体調は」 窓も灯りもない為お互いの顔も輪郭しか見えないが、先に口を開いた男の声色からは、言葉足らずだが心配の色が窺える。 「大丈夫だよ」 涼しげな優しい声がそれに答える。 先に言葉を発した男に見下ろされるように、優しい声の男は肘掛けに身体を預けて脚を崩していた。 「…なんか俺に出来ること、ないのかよ……」 悔しさを滲ませる物言いに、優しい声の男は笑った。 「何言ってるんだ。色々してもらってるのに」 「……」 「お前が思い悩むようなことは、何一つないよ」 「……」 その時、座敷の中にぼんやりとした赤い光が入ってきた。 廊下の端の方から点々とぶら下がる提灯に、灯りが入り始めたのだ。 間もなく二人がいる座敷の中も、柔らかい光に包まれた。  
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