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「にゃーにゃー」
ある晴れた昼下がり。一匹の子猫が泣いていた。
きっと漢字にしたら鳴いていた。の方が正しいのだろうがおれには泣いているように感じた。
「どこだ」
酷く枯れ、冷たい声は本当に自分のものかと疑ってしまう。
ここ数日、気の休まる日などない。
そんなおれが、一匹の声を探すなど、どうかしてる。
「にゃー」
さっきより近くなった声。辺りを見渡せば……いた。きれいな段ボールに、ひろってください。とガキが書いたのだろう。ひらがなで汚い字で、そう書いてある中に、そいつはいた。
「にゃー」
黒猫。そのくせ、目が青い。
嫌に目立つその子猫は泣いていた。
おれはそいつを見下す。
うるさい、黙れ、ゴミ、邪魔、泣いてんな
一気に負の感情が流れ出す。
あぁ、いらぬもの。
お前もおれと一緒で捨てられたのか。
そう、思った。
思ってしまったら一気に親近感が増す。
どうしたものか。
おれはその場に立ち止まったまま。
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