そのいち

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ピーポーピーポー どのくらい経ったか知らない。だが、追いかけっこの時間になってしまった。 「にゃー」 そいつはおれの方を向き鳴いた。 やっと鳴いたのだ。 そして立ち上がり、段ボールからひょいっと飛び出した。 「にゃー」 ついてこい。そう言われてるみたいで、驚いた。 音が大きくなり鬼が近づいてきた。 子猫は走る。おれをチラチラ見ながら。 そしておれは走る。 子猫の後ろを…… それは冒険が始まる合図か、終わる合図かわからない。 でも、何かが終わって始まるのだろうと思った。 タッタッタッ… 軽快な足取りで走る子猫。 ダッダッダッ 重たそうに走るおれ。 鬼は迫る。 やってくる。 当たり前だ。 血の匂いをまとっているのだから。 走ってたどり着いた。 そこは洋館。大きな城みたいな洋館。 「なんだ、ここは」 「にゃー」 そいつはお別れ、と言うように鳴いて洋館に入ってしまった。 「おい!待てよ!」 おれはこれからどうすればいいのか分からず子猫を追おうとしたが、もう見えなくなってしまった。 「どうすりゃいいんだよ」 後ろからは鬼。 前には謎の洋館。 おれは迷ってる暇はなさそうだ。
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