そのいち

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その洋館は、切り離されたみたいだった。 静かで、草木が心を静めてくれる。 「なんだ、ここは」 枯れて冷たくなった声すら、潤い温かくなった。 「おや、お客さんですか?」 いついたのか、目の前には綺麗な男の人。 男に綺麗はおかしいが、それしか言葉に出ない。 「お客さんじゃないみたいですね?……あぁ、今、話題の殺人鬼ですか」 「なっ!!」 「そんな顔せず、ゆっくりお茶でもしませんか?」 「するかっ!お前が鬼…じゃねぇ…警察に連絡するかも知れねぇじゃねーか!」 「あぁ、それは大丈夫です。この洋館に入れるのは心が綺麗な人だけなので」 「は?」 「綺麗な心を持つ人が殺人を冒すわけありません。誰かに罪をなすりつけられたのでしょう?」 「どうしてっ!」 知っているんだ。という声は男の人が遮った。 「大丈夫です。鬼は来ません。その証拠にほら」 男は門の方に指をさす。 その光景におれは言葉を失う。 「溶けてる?」 「はい。あれは悪魔のなりそこない。誰かに操られていたのでしょう。そして」 男は一旦話すのを区切る。 門を触ったその“悪魔のなりそこない”は、ジューと音をたて溶け、何事もないように消えた。
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