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その洋館は、切り離されたみたいだった。
静かで、草木が心を静めてくれる。
「なんだ、ここは」
枯れて冷たくなった声すら、潤い温かくなった。
「おや、お客さんですか?」
いついたのか、目の前には綺麗な男の人。
男に綺麗はおかしいが、それしか言葉に出ない。
「お客さんじゃないみたいですね?……あぁ、今、話題の殺人鬼ですか」
「なっ!!」
「そんな顔せず、ゆっくりお茶でもしませんか?」
「するかっ!お前が鬼…じゃねぇ…警察に連絡するかも知れねぇじゃねーか!」
「あぁ、それは大丈夫です。この洋館に入れるのは心が綺麗な人だけなので」
「は?」
「綺麗な心を持つ人が殺人を冒すわけありません。誰かに罪をなすりつけられたのでしょう?」
「どうしてっ!」
知っているんだ。という声は男の人が遮った。
「大丈夫です。鬼は来ません。その証拠にほら」
男は門の方に指をさす。
その光景におれは言葉を失う。
「溶けてる?」
「はい。あれは悪魔のなりそこない。誰かに操られていたのでしょう。そして」
男は一旦話すのを区切る。
門を触ったその“悪魔のなりそこない”は、ジューと音をたて溶け、何事もないように消えた。
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