2人が本棚に入れています
本棚に追加
なめらかな長い黒髪をポニーテールに結う、どの女子と比べても整っていると言う他ない程の、美貌の持ち主。
きっちりと着た制服も、どこか品のあるように見える。
自分のクラスの委員長だった。
彼女はその容姿と打って変わって、押しの強そうな声で言った。
「あんた何してんのよ!こんなことしたって何にもならないでしょ!早くそこから降りなさい!」
おれは振り返って、じっと彼女を見つめる。
鬱陶しいとは思わなかった。
ただ、自分をひき止めてくれる人がいるとは思っていなかった。
それ故に、自分の決意に揺らぎが生じた。
だがそれを必死に抑え込む。
もう自分は引き返せないところまで来ている。
後戻りはできない。
「ありがとう。でも、決めたことだから」
おれは生きてきた中で一番と言えるくらいの、満面の笑みを彼女に向けた。
彼女ははっと真剣な顔で驚き、それ以上何も言わなかった。
視線を前に戻す。
ゆっくりと、歯を食いしばる。
そして少しずつ体の重心を前に動かし、体が傾きながら宙に投げ出される。
ふわりと空気に包み込まれたような感覚。
神よ、いや叶うのであれば誰でもいい。
願わくば、あの彼女に幸せを。
願わくば、あの5人に絶望と死を。
おれはそんなことを考えながら、風を纏い落下していった。
最初のコメントを投稿しよう!