熱中症

4/4
前へ
/553ページ
次へ
茹だるような暑さが続いた何日目か。格納庫前のベンチで直射日光に晒されぐったりとしているデボラ。その左隣にはシエルが腕を組んでうたた寝をし、右隣ではクゥエルが暑さにヤられたらしく、デボラの肩を借りてぐったりとしている。 『クゥ、部屋まで帰れる?』 デボラが微かに呻き声をあげるクゥエルに聞いた。 『…気持ち悪い…』 僅かな気力で頑張って出したクゥエルの答えがそれだった。 『帰ろうか、多分熱中症だよ』 『そうする…うっ!』 『えっ!?ちょっと!?吐いちゃダメだよ!?』 『吐いてない…吐きそう…』 『ちょっと待って!?せ、整備班!整備班!!』 人手を借りようと格納庫に走るデボラ。それと入れ違いでロキが通りかかる。 『大丈夫…じゃなさそうだな…』 ベンチで横たわるクゥエルを見て呟くロキ。手にはついさっき購入した缶のスポーツ飲料水。クゥエルを座らせ、缶をクゥエルの首と肩の間に挟ませる。 『あ…ありがとうございます…』 心地よい冷たさにクゥエルの表情が少し緩む。 『それで水分補給すると良い。部屋に戻って行水する事をお勧めするよ』 『そうします…』 クゥエルは缶の中身を一口飲むと、駆け寄ってきた整備班(マグメル職員)の肩を借りて部屋に戻った。 『あれロッキーじゃん?どうしたの?』 戻って来たデボラがロキを見つけ聞いた。 『いや、通りかかっただけだ』 『そう、にしても暑いねぇ最近。私も着替えようかな?』 デボラが長袖の指揮官服の首周りをいじりながら呟いた。 『熱中症の影響が戦場にも出てたな』 『ドユコト?』 『マインV片っ端から踏んでいくバカが居たんだ。耄碌(もうろく)していたとしか思えん』 ロキは先日の戦場での出来事を話した。 『気付かれなかったの?』 『なんで気付かんのか聞きたいくらいだ』 『…』 デボラは雲一つ無い青空を見て呟いた。 『温暖化パネェっす』
/553ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加