81人が本棚に入れています
本棚に追加
茹だるような暑さが続いた何日目か。格納庫前のベンチで直射日光に晒されぐったりとしているデボラ。その左隣にはシエルが腕を組んでうたた寝をし、右隣ではクゥエルが暑さにヤられたらしく、デボラの肩を借りてぐったりとしている。
『クゥ、部屋まで帰れる?』
デボラが微かに呻き声をあげるクゥエルに聞いた。
『…気持ち悪い…』
僅かな気力で頑張って出したクゥエルの答えがそれだった。
『帰ろうか、多分熱中症だよ』
『そうする…うっ!』
『えっ!?ちょっと!?吐いちゃダメだよ!?』
『吐いてない…吐きそう…』
『ちょっと待って!?せ、整備班!整備班!!』
人手を借りようと格納庫に走るデボラ。それと入れ違いでロキが通りかかる。
『大丈夫…じゃなさそうだな…』
ベンチで横たわるクゥエルを見て呟くロキ。手にはついさっき購入した缶のスポーツ飲料水。クゥエルを座らせ、缶をクゥエルの首と肩の間に挟ませる。
『あ…ありがとうございます…』
心地よい冷たさにクゥエルの表情が少し緩む。
『それで水分補給すると良い。部屋に戻って行水する事をお勧めするよ』
『そうします…』
クゥエルは缶の中身を一口飲むと、駆け寄ってきた整備班(マグメル職員)の肩を借りて部屋に戻った。
『あれロッキーじゃん?どうしたの?』
戻って来たデボラがロキを見つけ聞いた。
『いや、通りかかっただけだ』
『そう、にしても暑いねぇ最近。私も着替えようかな?』
デボラが長袖の指揮官服の首周りをいじりながら呟いた。
『熱中症の影響が戦場にも出てたな』
『ドユコト?』
『マインV片っ端から踏んでいくバカが居たんだ。耄碌(もうろく)していたとしか思えん』
ロキは先日の戦場での出来事を話した。
『気付かれなかったの?』
『なんで気付かんのか聞きたいくらいだ』
『…』
デボラは雲一つ無い青空を見て呟いた。
『温暖化パネェっす』
最初のコメントを投稿しよう!