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トラザ山岳基地で行われた第三回イベントバトル、《装備限定戦》。機体の持ち込みが可能な代わりに武器は予め用意された物を使うこのイベントにスティアも参加した。
ツェーブラ39と41の混成ブラストで、エネルギー容量と歩行速度を強調した編成。使い慣れたパーツに違いはなく、スティアは気兼ねなく《楽しむ》ことにした。
『さぁて、楽しむぞぉ』
強襲兵装を担ぎ戦場に降り立つスティアのブラスト。岩場では派手な森林迷彩の一本角は早々にマーシャルソードを構える。
実はスティアは一部のボーダーから、裏で《切り裂き魔》というあだ名が付けられている。
かつて旧ブロア市街地でマーシャルソード一本で次々と敵を斬り倒した経験がスティアにはあり、その時彼女と同じ戦場に居た誰かが言い始めたのだろう。しかもその日が13日の金曜日という一昔前のスプラッター映画を彷彿させる日にちだっただけに、そのあだ名の広まりは早かった。勿論本人はその事を知らない。
『ヒャッホーイ!』
取り合いになるプラントに飛び込み一閃。直撃を受け吹き飛んだ敵に対する追い討ちもマーシャルソード一本。M99ーサーペントは構えすらしない。
それを繰り返す事数戦目、戦場にある変化が起こった。スティアを見つけた敵の一部が、同じくマーシャルソードしか構えないのだ。
『良いねぇ良いねぇ、そういう浪漫の分かる人は大好きだよ!!』
マーシャルソード一本で挑む剣客達にスティアも正面から挑む。
時にはタイマン、時には複数、数的優位を利用しようとせずにただ斬り合うボーダー達。その気まぐれと出来心が更にスティアをハイにさせる。
もはや彼女の選択肢にはマーシャルソードとマルチウェイの二種類しか無い。
占拠など二の次、コア攻撃など眼中にすら無い。今のスティアには、《ブラストを斬る》という思考しか無い。
勢い付いたスティアは剣客達の独りに挑戦状を叩きつけた。
『かかってきなさぁい!!』
何となく接近戦を好みそうという理由で選んだ相手。奇しくもスティアと同じツェーブラシリーズで統一された機体、少し派手目のカラーリングの《顎付き》だ。
挑戦されたボーダーは脚を止め、ジッとスティアのツェーブラを見る。程なくしてボーダーはサーペントをしまい、マーシャルソードを抜きはなった。
『勝負だ!』
顎付きのツェーブラからの直通無線。
『乗ったぁぁぁ!!』
一本角と顎付きが同時に距離を詰める。
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