1人が本棚に入れています
本棚に追加
名前を叫ばれたような気がして火竜(かりゅう)は飛び起きた。目の前には呆れた顔の青年が立っていた。
「…あ…兄上…?」
銀髪の青年…火竜の兄はいつまで寝てるのだ馬鹿者。等と叱責をしてくる。
お小言なら別の日で構わないだろう?
そう思いながらも兄には逆らえない自分がいた。
火竜の兄は一枚の真っ白い封筒を差し出す。宛先も何もない手紙だ。どうやら東条火竜様に渡してくれと言われた物らしい。
封が破られている所から危険物の可能性はないらしい。
火竜が手紙を受け取ると兄は踵を返しながら、
「あまり貴族らしからぬ行為をするな。母上が心配しておろた。」
と言い捨てて出て行った。
扉がしまり、兄が消えた方へ舌打ちをかます。
ーアンタにだけは言われたくねーよ…
手紙と言うものが何なのか気になり便箋を取り出す。便箋の取り出し辛さから、便箋は見られていない事がわかりなぜだか安心した。
高鳴る鼓動を胸に、彼は真っ白な二つ折りの上質紙を開いた。
「うぇるかむ…ざ…ワンダーランド?」
紙にはそう書いてあった。大きく、ポップ体で印刷されたチラシのようだ。
ー…なんだよ、つまらないの。
そう思いながら一応下の方に目線を落とすと見覚えのある筆跡で書かれた字があった。
『今宵、廃工場へ来るべし。同士集いし時、扉は開かれる。』
意味がわからない。
しかし、この筆跡は見間違える筈もない…失踪した兄の物だった。
最初のコメントを投稿しよう!