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今宵、廃工場へ。
気になって仕方がない、と火竜は思っていた。好奇心に負けて廃工場へ行っても良いのだろうか?
行ったら後戻り出来ないような、不思議な感覚に駆られている。
(でも…呼んでる気がするだ…)
廃工場に行くだけだ…何も怖い事はない!
と自分を納得させて、念のためにと薬や非常食を用意した。
(あれ…この時点で俺、危ないって思ってね?)
しかし、持っていて損はしないだろう。そう思いウエストポーチに詰め込んだ。
どうせ屋敷にいてもつまらないんだ。たまには構わないだろう。
愛用の二丁の銃も忘れずに閉まった。
「姉上…」
大きな廊下を歩んでいると病的に白い肌の姉を見かけて火竜は歩を止めた。
「火竜…行かれるのね。」
まさか、姉は手紙を?
疑問に思いながらも頷く。姉の表情が曇った気がした。
「…そう……」
寂しいそうにそう呟いた後、火竜の手を握る姉。
翡翠色の瞳が火竜の深紅の隻眼をしっかりと捉える。
「…火竜…貴方はちゃんと戻ってくるのよ。」
兄の事を比喩しているのだろうか?
「大丈夫だよ。ちゃんと戻るから。」
微笑んで姉を安心させる。その後優しく姉を抱きしめる。
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