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「ちょ、明らかに怪しい人を見たみたいに逃げないでくださいよぉ!」
怪しいと自覚しているなら宜しい。だが、何故腕を掴むのだ。
「怪しい方が悪いんだ、ほら。放したまえ。」
適当にあしらおうとも放してくれない。というか怪力だなコイツ…地味に捕まれた腕が痛い。
人影はダークレッドの細い瞳に同じ色の髪をしていた。微妙に三つ編みにしている。
服は白を基調とした、緩そうな…着方を間違えてそうな服だ。それに頭には…到底解り合えなさそうな、趣味の悪い薔薇にカレンダーがついたシルクハットを株っていた。
そして決めつけは足元に芋虫。変人決定だ。
「どっからつっこめば良いのやら…」
廃工場の巨大な穴から不思議な森に落ちてきて不審者に会った場合、どこに通報すれば良いんだ?
寧ろこの世界はオレのいた世界なのだろうか?違う気がする。だったら、警官なんかいないのかも。
怪しいお兄さんは未だにオレを放してはくれないみたいだ。
第一声に名前を間違えられたのに、誰が立ち止まるんだ。
そんなオレの、自分でもわかる冷たい視線にやっと気付いたのだろう。人影は不気味に口角を上げ、笑った。
何がしたいのかが理解出来ないオレにはため息を吐いた。そのまま兄弟姉妹に言われた絶対零度な冷たい視線を送り続けた。
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