一日目②屋上

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インスピレーションというか何というか、病室に閉じこもっているだけでは、中々文章が浮かばないのだ。 「もっとこう、主人公を明るいキャラにしましょうよ。ほら、笑いながら『君の為なら僕は絶対に死にません!』とか言うくらい」 「それじゃあ、ただの馬鹿だよ」 「何ですと!私が馬鹿だとでも言うのですか!」 「君の事だったのかよ」 びしっ、と裏手をゆうこさんに打ち込む。 ぼくとゆうこさん。 ほんの一時間前に知り合い、僅か五十分までは赤の他人同士、そして現在は一応恋人同士だ。 超展開である。 ぼく、十六歳。生まれて初めて出来た恋人は、吹きすさぶ自縛霊こと幽霊のゆうこさんだった。 「――ところで、これは私が言ってはいけないことのような気がしますけど、どうしてかなちゃんは私とフォーリンラヴになってくれたのですか?」 「早いよゆうこさん。まだそこまでは行ってないよ。付き合っただけだよ」 因みにかなちゃんというのは、ゆうこさんがぼくにつけたあだ名だ。ほら、物語的にも呼び名がないと不便だし。 「んま!私との関係は遊びなんですか!」 「凄いよゆうこさん。どうして今のでそうなるのさ」 「まあ、冗談はこの辺にしまして――」 くるりと、それまで手すりから一歩引いて立っていたゆうこさん(体重を預けると落ちるらしい)が、ぼくに向き直る。
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