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インスピレーションというか何というか、病室に閉じこもっているだけでは、中々文章が浮かばないのだ。
「もっとこう、主人公を明るいキャラにしましょうよ。ほら、笑いながら『君の為なら僕は絶対に死にません!』とか言うくらい」
「それじゃあ、ただの馬鹿だよ」
「何ですと!私が馬鹿だとでも言うのですか!」
「君の事だったのかよ」
びしっ、と裏手をゆうこさんに打ち込む。
ぼくとゆうこさん。
ほんの一時間前に知り合い、僅か五十分までは赤の他人同士、そして現在は一応恋人同士だ。
超展開である。
ぼく、十六歳。生まれて初めて出来た恋人は、吹きすさぶ自縛霊こと幽霊のゆうこさんだった。
「――ところで、これは私が言ってはいけないことのような気がしますけど、どうしてかなちゃんは私とフォーリンラヴになってくれたのですか?」
「早いよゆうこさん。まだそこまでは行ってないよ。付き合っただけだよ」
因みにかなちゃんというのは、ゆうこさんがぼくにつけたあだ名だ。ほら、物語的にも呼び名がないと不便だし。
「んま!私との関係は遊びなんですか!」
「凄いよゆうこさん。どうして今のでそうなるのさ」
「まあ、冗談はこの辺にしまして――」
くるりと、それまで手すりから一歩引いて立っていたゆうこさん(体重を預けると落ちるらしい)が、ぼくに向き直る。
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