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「自分で言うのも何ですが、私は可愛いさと明るさだけが取り柄の幽霊です」
「本当に自分で言うことじゃないよね」
「例えば――その小説を取ってみても、登場人物に理由なき行動は許されないんですよ。『なんとなく』とか、『別にいいや』は、それだけで糾弾される対象です。読者は常に理由と意味を求めているのですよ」
「現実では全てが全てに理由なんてあっていいはずがないのにね」
理由があれば納得できるのだろうか。そんな馬鹿な。生きているから死ぬ。そこに意味はない。
「……この場合の登場人物はかなちゃんです。読者は私です。さあ、理由をお答え願いましょうか」
登場人物に干渉する読者がいてなるものか。
という言葉はすんでのところで呑み込んだ。
ゆうこさんの瞳が思った以上に真剣だったからだ。
ぼくは、この短期間で空気を読む行為を覚えていた。
「うーん……まあ色々あるんだけど、第一にはゆうこさんが可愛いからかな」
やっぱり気のせいだったかもしれない。
「んま!」
ゆうこさん、真に受けていた。いやまあ、嘘ではないのだけれど。
「後はそう――身体目当て?」
「まさしく身も蓋もない!」
「まあ、冗談はここまでにして――」
「どこまでが!?」
先ほどゆうこさんが言った台詞をそっくりそのままなぞりながら、ぼくは自己分析を開始する。
「ねえ、可愛いの部分は本当ですか?本当ですよね?ねえ!」
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