4157人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
目覚めは快適だった。
嫌な夢も、発作に悩まされることもない。久しぶりに心地のよい朝。
ぼくはもぞもぞと寝返りを打ち――
「むにゃむにゃ……お約束!」
そこにはゆうこさんがいた。すやすやと。ワンピースの肩紐がずれてどこか官能的に。眠っていた。
「……何してんのさ?」
ぱちりと、ゆうこさんの目が開く。
「はっ……おはようございます。昨日はとても甘い夜でしたね。ところで夜が甘いとは一体どういった表現なのでしょうね」
「知らないよ。寝起きなのに随分饒舌なんだね君は」
「えへへ」
「確かに褒めはしたけども」
起きる。
背伸びをする。
窓を開ける。
顔を洗う。
一連の動作をこなしたところで、ぼくは何だか久しぶりにペンを取った。
「書けるようになったんですか?」
「まあね」
そう答えたぼくの心中には、昨夜の出来事が鮮明に渦巻いていた。
あれだけ泣いたのは初めてだ。あんな温もりを感じたのは初めてだった。
友達が死んだのに、翌朝にはもう平常心を取り戻しているぼくは、薄情者なのかもしれない。けれど――。
横を見る。
ゆうこさんの綺麗な顔があった。
けれど、今は独りじゃない気がした。
最初のコメントを投稿しよう!