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「――?」
一体全体突然唐突にどうしたというのだろうか。
気でも触れたのか。
だったら不幸中の幸いである。ここは病院だし。頭の病気も治療してくれるかどうかは分からないけど。
「ハイターッチ!」
心配するぼくを余所に、ゆうこさんが言った。掛け声のような大きさだ。
「病院ではお静かに」
「あ、はい。ごめんなさい――ってえ!……その通りですね」
しゅんとうなだれるゆうこさん。得意(?)のノリツッコミを途中で投げ出した辺り、本気で反省しているようだった。
悪い人ではないらしい。
だからどうしたという話だが。
「え、と。その、醜いメス豚の私にタッチなどしていただけないでしょうか?」
意味と意図は通じた。でも言い方はおかしいと思った。
ぼくは身体をずらして、ゆうこさんと正面から向き合う形になる。
視線を合わせると、彼女は、
にへら、と微笑んだ。
毒気どころか生気さえ抜かれそうな笑みである。
「はいたーっち」
ゆうこさんの声に合わせて、右手を振り上げる。そして、彼女の手に今にもと触れようかといった、次の瞬間。
すかっと。
ぼくの手が爽快に、空を切った。
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