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「知らないけど、ぼくが余命いくばくもない患者さんだからじゃないかな?」
「――?何を――」
「ほら、別に死んではいないってだけで、生きてるとも言えないし。ああ、もちろんぼくだけなのかもだけど。他の人は皆必死だったしね。そういえば、ここに移る前にはそういう人達ばっかりだったなあ。懐かしい。絶望して、恨んで、苦しんで、頑張って、泣いて、喚いて、願って、請いて、ちょっとだけ悟って、喜んで、それでも結局は死んじゃうんだ。本当、命ってなんなんだろうね?」
「それは――」
ぼくとしては軽い世間話のつもりだったのだけど、何故か空気がシリアス化してしまった。おかしいな。こんなはずじゃなかったのに。
沈黙が流れる。
重い――こういうのを重い空気というのだろう。別に空気が重くなったわけではないのに、少し変だと思った。
「…………私は――」
ややあって。
ゆうこさんがゆっくり口を開く。
さっきまでの快活で軽率な雰囲気はもうない。
「私はその答えが知りたいんです。命って何なのか……だから――」
真っ直ぐな、視線。
底の知れない、どこまでも澄んだ――瞳。
矛盾。内包。決意。
「だから、私と――」
さくらんぼのような唇が、静かに力強く――
「私と付き合ってくだしゃい!」
見事に噛んでみせた。
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