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夢は、8㎜Filmみたいだ。
何だかぼやけた映像。
懐かしい匂い。
手に掴む事が出来ずに、ただ、見入るばかりで。
映写機が壊れると、何度も繰り返し同じ映像をたれ流す。
何度も。何度も。
針が飛んだレコードプレーヤーの様に何度も繰り返し同じ言葉を吐き出す。
何度も。何度も。
夢は過去を映し出す。
未来を予言する。
自分を、作り出す。
猫が死んでいる。血でベッタリと朱く染まっている。
俺が立っている。もう一人、女の子がいる。
猫を抱き上げる。
小さな子猫は突然男に変わる。男は弾けたざくろの様に血にまみれている。
男から流れ出た血液が、俺の身体を朱く朱く染めていく。
男の口から、鼻から、耳から、瞳から、身体中の穴という穴から朱い血が溢れ出していく。
「うああああー!」
雄叫びをあげ、男を投げ捨て、闇の中を走り出す。
一心不乱に。見えない何かを振りほどく為に。
立ち止まると、俺は俺の部屋にいた。バスルームにいた。
右手にナイフを携えている。左手の手首からは朱い血が流れ垂れ落ちている。
「ああああー!」
右手のナイフを振りほどこうとするが、手からナイフが離れない。それどころか、鋭く尖った刃は右手を動かして更に左手首に襲いかかろうとしている。
「や、やめろ、やめろぉー!」
抵抗出来ないまま右手は力を込めて左手首を切り裂いた。
何度も。何度も。
「うぐあああー!」
強烈な痛みが俺の身体を駆け巡る。身体が軋む。胸が締め付けられる。
無感情にナイフが再び左手首を切りつける。
途端に目を覚まし起き上がった。
全身に汗をかき、鼓動が痛ましく速い。
荒い息の中、静かに左手の手首を見た。
傷はない。
ハッと、溜め息をつくと、そのまま倒れる様に横になった。
暗い部屋の壁にはアンディウォーホルによるジョン・レノンの肖像画のポスターに、ジョンの親友で早逝した奇才スチュワート・サトクリフの狂気の絵が飾られている。
おまえらが悪夢を見せるのか。
再び眠りについた廉嗣の瞼には涙が滲んでいた。
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