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私は今、抱かれている。
快楽に、身を委ねている。
彼は会社の同僚で三つ年上。その力強い腕に私は身体を預け、ただ、溺れていく。
私は彼を好きな訳ではない。かといって、憎い訳でもない。
優しくて、気持ちが良い。
ただ、それだけ。
私は人を愛せないのかもしれないと思う瞬間。
「ハァッ、ハァッ、ま、真珠!」
彼が最後の咆哮を吐き、私の上に覆い被さった。
二人の早い息遣いが重なる。
汗ばんだ身体を投げ出すと、彼は一人バスルームへと向かった。
「ハァ…。」
まだ熱い。火照りは私を包んで流れている。
ザァー。シャワーの流れる音が聞こえてくる。
そのノイズの中、彼が何か呟いている。
聞き取れないで黙っていると、今度は大きな声で彼が言う。
「なあ、結婚しないか。」
瞬間、火照りは全て放たれた。
私に、暗い影が落ちた。
最悪の言葉を聞いてしまった。気がつけば、私は彼の求愛に何ら答える事無く、半裸のままで部屋を飛び出してしまっていた。
その微睡みは、私の居場所ではなかった。
私はまた、流れてゆく。
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