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時計の針が、PM2:00を回った。
真珠は、お茶を淹れる為に席を立ち、給湯室へと向かった。
応接室にて来客と打ち合わせをしているのですぐにお茶を用意して欲しいとの事。
全く、私はお茶汲み要員じゃないぞ!なんて言いつつ、お茶を淹れて給料が貰えるならまあ別にいいや。
真珠はそんな事を考えながら三階にある応接室へと足を運ぶ。
「失礼します。」
応接室のドアを開けると、三人の男達が熱気を帯びて話し合いに興じていた。
「テーマがテーマだけにねえ。これじゃ少し幼稚過ぎるんじゃないの。」
ふんぞり返っているのは我が課のガンである課長だ。このオヤジのせいで我が課の同僚達は苦心の日々を過ごしている。ネチネチとしたイヤミな奴なのだ。
「しかしですね、今回のコンセプトをお聞きした上でこの図案になったんです。子供から大人までの全般を対象とするのなら、一番自然だと思うんですが。」
「しかしねえ。」
「しかしも何も、第一案は御社のご要望に沿っていたはずですよ。」
相手の男が懸命に立ち向かっている。ダメオヤジ相手になかなかアグレッシブじゃない。
……おやぁ?
真珠は何か気になって相手の男の顔をじぃっと見つめた。その様子に気づいた課長の隣の男が真珠に声をかける。
「何を呆気っとしているんだ。お茶を置いて早く出て行けよ!」
それまで大人しかったその男は言うなり真珠をきつく睨んだ。
真珠は素知らぬ振りをしてその視線を躱すと、三人の囲むテーブルにお茶を並べた。
「どうぞ。」
真珠がテーブルから離れると、相手の男は一言
「ありがとうございます。」
と返すなり再び意見を述べ始めた。まるで真珠の姿が映っていないようだ。
真珠は打ち合わせをそっちのけで自分を睨み続けている男性社員を尻目に応接室を後にした。
「あの人って確か…。」
えーと、何君だっけ…。この前会った人だよね…。
記憶の棚を探り、それでも見つからないのですんなり諦めると、自分の仕事場へと戻って行く。
「にしてもアイツ、ウザいなあ…。」
思考はすぐにシフトされていた。その再会の大きさもわからないままに。
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