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季節は春-
今年で僕、森川夏樹は高校二年生となる。
一年生の時は特に何もなく平凡な日々を過ごしていた。
思い返してみても同じ感想しか浮かばない
…つまらない。
ありきたりなものばかりに満ちている生活。
平々凡々、実にいいことなのだろう。
でも…つまらないのだ。
自分の人生を大きく変えてしまう出来事とか出会いとか、そういうものを求めてしまう。
…馬鹿げてる、有り得ない。
そう言いつつも起きるはずもないことを頭で思い描きながら、馴染みの通学路をのんびり歩く。
そのとき不意打ち気味に後ろからバシッと背中を叩かれる。
「今日はいつもにまして暗いなっ夏樹!」
振り返ると、一年生の時に同じクラスだった野中哲が立っていた。
「…哲か、少し考え事してただけだよ」
「ふーん、まぁ夏樹らしいけどな」
らしいってなんだ。僕は四六時中考え事してるみたいじゃないか。
「それより夏樹!…今日は何の日か分かってるよな?」
「始業式でしょ?」
春休みが終わり今日は始業式の日。
そのため、今こうして学校に向かっているわけだ。
「ちっっっがーーーーう!!夏樹!お前はなんっっもわかってないな!」
「とりあえずうるさい…音量下げなよ。周りに迷惑だし」
周りからの視線が痛い…。
「おお…だからな。今日は始業式もあるが一年生が入ってくる日じゃん?」
そりゃあそうだ。始業式は一年生の入学式も兼ねてるわけだし。
「だから?」
「女の子のチェックに行くぞ」
哲は至って真面目な顔で言った。
「…パス」
無視してまた歩きだすと、
「んな連れねぇこと言うなよ~。一年生の教室見てくるだけだから!同行してくれるだけでいいから!」
哲が何度も手を合わせ頭を下げる。
「はぁ…わかったよ、ついてくだけだからね?」
ため息混じりに許可すると、パッと顔を上げ肩に腕を回し
「さっすが夏樹!心の友よ~」
こんな台詞、某国民的アニメのがき大将しか使わないと思ってた。
「はいはい、遅刻するから早く行くよ」
腕を払いのけ、学校へ向かう。
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