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あれからしばらく歩き続けているがまだ着かない。
だんだん足どりが重くなってきたし、少し休むか…。
近くにあった岩に座り休憩していると、
キューという何かの泣き声が聞こえてきた。
振り返ると何か黒い塊がこちらに飛んできて僕の後頭部にぶつかってきた。
不意打ちの衝撃にたまらず頭を抱える。
「フィナ!」
そこに女の子が何かの名前を呼びながら駆け寄ってきた。
よくみるとその黒い塊は梟だった。
フィナというのは恐らくこの梟の名前なのだろう。
「その梟は君の?」
「うん、私の親友のフィナ!フィナがあなたに何かしたみたいだったけど大丈夫だった?」
「うん、まぁ大丈夫だけど…あ!」
「なに?どうしたの?」
思わず驚いてしまった。
何故ならこの女の子は今日学校で一年生のクラスで見かけたあの眼鏡の読書少女だったからだった。
眼鏡を外しているから気付かなかったが間違いない。
「君、香田高校の一年生だよね?」
「はいそうですけど…あっその制服!同じ学校だったんですね」
少しは驚いたようだが理解してくれたようで、なるほど。という顔をしている。
「今日教室で見かけたからさ、まさかこんなとこで会うとは思わなかったけど」
「そうだったんですか。…ということはあなたも私と同じように選ばれたんですね」
ん?選ばれた?
「どういうこと?」
「ここにくるのは初めてですか?」
「初めてだよ。てかここどこなの?」
「この世界はディソードと呼ばれています。私達が普段暮らしている世界とはまた異なる世界。つまり異世界なんですよ」
「異世界!?…これって夢だよな?」
「全部現実に起こっていることです。私も最初は夢だと信じたかったですけど…」
「どうしたら帰れるの?君はここに何度か来たことがある感じの言い回しだったけど」
「実はよくわからないんです…。いつも気が付くと元の世界でしたから。時間制限なのか何かをやらないと帰れないのかさっぱりです」
「なんかわけわからなくなってきた…」
「最初はそうなりますよね。とりあえず町に向かいませんか?行く当てもないなら」
この子はこの世界に詳しいようだ。元の世界に帰る方法がわからない以上付いていくのが得策か。
「…わかった。僕は森川夏樹、よろしく。君は…」
「私は三葉アリスです。よろしくお願いします夏樹さん」
「こちらこそ、よろしくアリス」
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