プロローグ 科学の町

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科学の町、サイスティック。 そこは世界一の技術を持った科学者が集まる町。 科学王、サイエンスが造ったこの町に主人公、ミミがいた。 彼女はたぐいまれなる才能を開花させ、たった十歳で誰もなしえなかった物質を圧縮し、収納する技術を生み出した。 そして、十五歳で不老不死の実験を行い、自らを老いない体にしてしまった。しかし、その技術を誰にも教えず、彼女はサイスティックから姿を消した。 それから五年の月日が経ち、彼女は全く変わっていた。 容姿は五年前のままだが、その内面はマッドサイエンティストと化していた。 彼女は禁忌とされる人造人間を作り出し、サイスティックに帰ってきた。そして、ミミの作品七人によって、科学の町、サイスティックは制圧された。だが、それは新たな時代を迎えるのと同義だった。 彼女はサイスティックが独占していた科学技術を世界に伝え、科学の町をさらに大きくし、科学国、サイエンティラスを建国した。 そして、ミミはそこの女王となり、今日もその才能を持て余していた。 「今日もこの国は平和ね」 緑の髪に緑の瞳をしたメガネの少女が言った。 彼女が科学女王、ミミ。 「それはあなたがなし得たことでしょう。民も喜んでいるではありませんか」 全身緑の人型ロボット、識別No.001 バイオラルが言った。 『はっ!! 偽りの平和なんざぁ意味がねぇ。所詮この世は人間がいるかぎり戦いが絶えねぇよ』 そういったのは、バイオラルのなかにある、もう一つの人格、暴風樹。そう、バイオラルには二種類のAIが搭載されているのだ。 「そうだよねぇ、この国を一歩出れば戦いが支配する世界。この国は所詮偽りの平和だよ」 所々本物の肌のように白い人工肌を露出した、緑色の少女が言った。彼女は識別No.002 バイオラミ。名前のとおり、バイオラルの後継機として作られたAI搭載型のロボットだ。 『シカシ、ドウスレバ平和ガ?』 多少カタコトな言葉を使うのは、バイオラミに組み込まれたもう一つのAI、ミウ。彼女はプロトタイプのAIのため、少々カタコトになっている。 「その答えは誰も知らないんだ。戦争は人の心が生み出すもの、それと同じく平和も人の心が生み出すものなんだよ」 獣の耳を生やした、肌が少々黒い青年が言った。彼は識別No.003 カオル。人造人間だ。
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