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「あの…一つ聞いてもいいですか?」
「私に答えられることならば何でも答えますよ」
そう微笑むギルバートにシンは先程から感じていた疑問をぶつけてみることにした。
「どうして見ず知らずの俺にここまでしてくれるんですか?ギルバートさんからすれば何の関わりもない浮浪者みたいな人間を助けたところで何も得は無いでしょう?今までの態度で大体分かりましたが、商人としても優秀な貴方が損得勘定抜きで人を助けた理由を聞きたいんです」
その言葉にギルバートは俯き、寂しそうな顔を浮かべ、その表情のままシンに向き直った。
「確かにシンさんを助けたところで私に得は無いでしょう。ですが…十年前、私は妻と息子を失いましてな…息子が生きていればシンさんくらいの年齢だと思いましてな。少し老婆心が働いたわけですよ。まぁ、感情で動くのでは商人としては二流かも知れませんがね」
そう言い、自嘲を含んだ笑いを浮かべるギルバートにシンは何も言えなかった。慰めなど必要としていないだろうし、嘲笑うなどもってのほかである。どう反応したものかと悩んでいるとギルバートが申し訳なさそうに口を開いた。
「反応に困る話をして申し訳無い。まぁ、そういう訳ですから、ここはこの老人の顔を立てて下さい」
そう言って寂しく笑うギルバートにシンは頷くことしか出来なかった。
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