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「アマギ・シンさんですか。変わった御名前ですな。それに無理に口調を私に合わせなくても結構ですよ」
ギルバートは笑いながら言った。その笑いはけして不快なものではなく、むしろ友好的なものだった。
「ならお言葉に甘えます。あ、一つ訂正するとシンがファーストネームです」
「これは失礼しました。しかし、申し訳ありませんが魔法使いであるシンさんが欲しがりそうなマジックアイテムの類は今は切らしているのです」
「ああ、大丈夫です。俺は何か買おうとしたんじゃなくて道を聞きたかったんです」
ギルバートは僅かに驚いた顔し、すぐに温和な笑みを浮かべるとシンへ尋ねた。
「道ですか。して何処へ向かおうとしているのです?魔法研究所があるラ・グールですかな?それとも伝説の鍛冶屋サイクが住まうベルキュアですかな?」
「いえ、クレイルという街に行きたいのです」
「クレイルですか。それなら私も今から行くところなのですよ。何なら御一緒にどうですかな?と言ってもここからなら歩いて一時間とかかりませんが」
ギルバートが軽く笑いながら尋ねるとシンは迷わず頷いた。ギルバートは打算や何かの目的では無く、純粋な好意で言ってくれているからである。それにこの‘世界’のことを色々と知っておいた方が都合も良いだろう。
幸い、相手は商人。商人ならば様々な場所を渡り歩いているのだろう。情報を聞くにはうってつけの相手である。
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