星の背に触れて

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「あ、篠原さん。こんばんは」  時間ぴったりに部室のドアを開くと、既に来ていた部長が言った。それなりの大きさの天体望遠鏡を軽々と担ぎながら目配せをする。 「あれ、持ってきて」  長机の上には、星座に関する本が数冊と部活ノートが入った鞄が置いてあるだけ。他に部員はいない。蛍光灯が付いていた。その他は、見慣れたいつもの部室だった。埃はひんやりと落ち着いていて、寂寥感が漂っている。この感じもいつもと何ら変わりがない。  殺風景というべきか雑然というべきか、部室はその広さ故に物置にされてしまっているのだった。地球儀や鼻の欠けた石膏像、剥き出しの掃除用具、文化祭で使う看板など様々なものが部屋の隅に置かれている。天文部の所有物といえば、元々置いてあったこの長机とパイプ椅子くらいのものだろうか。 「あの、部長、手伝いましょうか」  部長は右肩に天体望遠鏡のバッグ、左手に三脚と交換レンズの入った木箱を抱えていた。 「僕の方はいいから」  それだけ言うとさっさと行ってしまう、相変わらずな部長。
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