星の背に触れて

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 部長は三年で、あたしは二年。もうすぐ大学受験を控えている部長は、最近はあまり部活には来ない。それでもこうやって、特別活動の日には顔を出してくれる。というか、こんな時期まで部活に来ていてもいいのだろうか。  あたしは自分の鞄をパイプ椅子の上に置いて、代わりに指示された緑の肩掛け鞄を持ち上げた。電気を消す。そして部長の背中を追いかける。  今日は天文部の活動日。しかし朝から生憎の曇天だった。天気予報なんて、あたしのダイエット宣言なんかよりも当てにならない。多分。  授業中ずっと気になっていた天気がとうとう回復しなかったことも、気温が昨日に比べて二、三度低くなったことにも本当に嫌気がさす冬の日。  手袋をしてきたのは正解だったかな。  天文部では普段の活動の他に、こういった野外特別活動が年に何回か実施される。これは他の文化部に比べ、一層華やかさに欠ける部のひっそりとした唯一華やかな行事なのだ。  この間の文化祭だって、プラネタリウムか何かをやってみてはどうかと提案したものの、ほとんどの掛け持ち部員たちがこちらには参加できないという理由で、美術部の模擬店を手伝う羽目になってしまったくらいだ。うちの高校は部活動主体の企画で文化祭が盛り上がるというのに、天文部は本当に、日陰の存在なのだ。プラネタリウムは確かに、だからどうなのって感じの案だったかも知れないけれど、天文部での思い出を作りたかったなぁ……なんて今更。「二人でもやる?」と言ってくれた部長に、素直にやりたいと言えば良かった。
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