真夜のサイクリング

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 その日も塾は7時頃に終わった。例の如く友人とゲームショップの机を借り、ちまちま貯めた小遣いをいくら注ぎ込んだかわからないカードゲームに勤しんだ。  ふっと時計に目をやると、熱中し過ぎていたのであろうか、もう9時を回っていた。友人は「これはいけない。流石に叱られる」と言い、そそくさと店を後にした。9時というと、よい子は寝る時間である。私はよい子ではなかったから、9時には寝なかった。それどころか、その日は更に寄り道したいという衝動に駆られたのである。  私は自転車が好きである。正しく言えば、ママチャリが好きである。何処へ行くにもママチャリに乗って移動した。塾の行き帰りも、本屋へも、すぐ近所の床屋へも、何処へでもママチャリである。今でも、10kmほど離れた友人宅へはママチャリで行く。友人は電車かバスで来いというが、断じて遠慮しておく。ママチャリ至上主義とは私のことである。  やはり当時もママチャリで塾へ通っていた。ママチャリという脚を身に付けていた小学生の私に怖いものはなかった。コイツにさえ乗っていれば何処へでも行ける。何からでも逃げおおせる。私はママチャリ乗りとしての自分に絶対的な自信を持っていた。
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