※序章※

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「おっじゃまっしまーすっ!!」 玄関を開けた隼人に続いた亮平が大声で叫んだ。 やっぱり隼人の家は快適で、ドアを開けた瞬間、涼しい室内から風がくる。 その声を聞きつけたらしく、奥から隼人のお母さんが出てきた。 「あぁ母さん、こいつら連れて来ちゃったから。紅茶となんかお菓子でもよろしく」 「あらあら。じゃぁ後で持って行くわね」 隼人のやつ、こんないいお母さんと金持ちでエアコンの効いた家なんてズルいぞっ! いつも綺麗で優しい隼人のお母さんを見て、陸哉は毎回のことながら隼人を羨ましく思った。 家にいる太った母さんや、暑い家を思うとちょっと虚しくなる。 「……おい、なにボーッとしてるんだよ。さっさと行け。亮平はもう行ったろ?」 「……うるさい、隼人のバカ」 「はぁ? お前急になんだよ?」 それには答えず、立ちすくんでいた陸哉はノロノロと階段を上がった。 これは、いつものこと。 生まれついた家庭環境なんて仕方ないとわかっていても、やっぱり悪態をつかずにはいられなかった。 二人とは幼稚園からの仲だが、コンプレックスなんてなかなか消えない。 今は、いつも通りの隼人の余裕に満ちた態度ですら苛立ちのもとになっている。 陸哉の希望通り、室内は確かに涼しいのにどうも様子がおかしいのを見て、隼人は首をかしげた。 .
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