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30分後、霞が大きな袋をぶら下げ帰ってきた。
額から汗が流れ落ち、走ってきたのが見て取れた。
『はぁー疲れた!! やっぱりさ、名前あった方がいいよ』
〔いきなり何?〕
『いや、服選んでる時に思わず「死神に合う服下さい」って言っちゃったからさ』
〔それと名前の話は別物だと思う。
さっきも言ったけど、俺は死神だから名前なんか無いっていうか必要無いから。
……だけど、そんなに名前で呼びたければ勝手にして構わないよ〕
意外な死神の返答に少し驚いた顔の霞。
そして笑顔で考えた名前を言った。
『じゃあ……カイは?』
〔カイ? 何か意味はあるのか?〕
『うん!! 無いよ!!』
〔無いのかよ!!〕
『ごめんごめん。本当は飼ってた犬の名前だったんだ。
でもカイは私が子供だった時、車に引かれそうになった時に私を庇って死んじゃったの……
貴方もさっき私を助けてくれた。だからカイ!!』
死神も馬鹿じゃない。
人間の感情は手に取るように分かる。
霞は帰ってくる時、たかが名前に必死になって考えてきた。
〔カイ……か。霞がそれでいいならそれで構わない〕
『本当!? じゃあ今から貴方はカイ。
何か不思議な感じだけど、改めて宜しくね』
霞は本当に理解しているんだろうか?
今、目の前にいる存在が自分の魂を獲りに来た死神だという事を。
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