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カイは霞が買ってきた人間の服を渋々着た。
死神だと気を利かせたのか黒のTシャツに黒っぽいジーンズに黒のスニーカー。
カイの髪の毛から靴まで全身黒づくめ。
〔全部黒にしたのは、俺が死神だから気を使った?〕
『うん、まぁね。それに一色だから買い易かったのもあるけど。
でもさ、買ってきてなんだけど全身黒はやっぱり暗いね』
〔そう? 俺は死神として生まれた時からこんな感じだから違和感は無いんだけど、人間の感覚は理解できないな〕
照れ臭そうに少し苦笑いするカイ。
『あのさ、その紅い瞳ってどうにかならないの?』
〔これか? これは死神の象徴とも言える紅い瞳だからどうにも出来ないよ〕
『そっか。じゃあ外人って事にしておくね』
霞は大きく背伸びをする。
『うーん。今日は何だか走りっぱなしだからお腹空いちゃった』
〔人間はそんなに腹を空かせるものなの?
俺達はそういう感覚が一切無いから分からないけど〕
『私は人間なの。食べなきゃ死んじゃうでしょ?』
〔まぁ確かにそうだね。
(不幸不幸って言ってた割に結構笑うじゃん。
やっぱり君は不幸なんかじゃないよ)〕
カイはポケットに手を入れ歩き出す。
『ちょっとどこ行くの?』
〔どこって、腹減ってるんでしょ? 俺は現世での何かを食べる場所は知らないけど〕
普通なら、死神にとっては意味の無い人間との会話。
だがカイにとって、この霞との会話は何か意味のある物に感じられた。
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