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帽子を深く被り、見た事の無い現世の町並みを見渡す死神カイ。
だが明らかに不審者にしか見えないカイの姿に、行き交う人が振り返る。
もちろん霞は気にしてはいないが、カイは今にも死神の大鎌を振り回しそうだ。
『ところでさ、死神って寝たりするの?』
〔寝る訳無いじゃん。その前に死神と生者を一緒にしないでよ〕
『それもそうだよね』
そんな話をしながら横断歩道に差し掛かった時、カイは霞の腕を掴む。
『痛っ! ちょっと何?』
と霞が振り向くと、深く被る帽子のつばの下から見えるカイの紅い目が、さっきまでとは違いうっすらと光っているのが分かった。
『ちょっとその目……』
〔やっぱり「アレ」が見えないんだね〕
『アレ?』
カイが一瞬指を差す先に視線を送る霞。
その先は横断歩道を挟んで向かい側にいる一人の痩せこけた男がいる。
『あの人がどうしたの? まさか何かに取り憑かれてるとか言うんじゃないでしょうね』
〔笑っている所悪いけど、そのまさかだよ。アレはやばい……〕
『え? じょ、冗談でしょ……』
〔俺は下っ端の死神でも、神に名を連ねる存在。
間違いなんて事はありえない。
アレは行き場を失い現世に留まってしまった魂に憑かれている〕
『現世に留まった魂って……まさかさっき言ってた』
〔……悪霊だ〕
カイの後ろに下がった霞は、生まれて初めて「霊感」と言うものを感じていた。
それは悪霊から感じたのではなく、目の前にいる異質な存在「死神」から感じていた。
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