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〔悪霊はもちろん、憑かれている人間とも絶対に目を合わせないように〕
『そんな事言われても!!
も、もし合わせたら、ど、うなるの?』
〔間違いなく憑かれる。
特に霞の場合は命の蝋燭が小さい。
もし悪霊に取り憑かれたら間違いなく、一日も経たずに死ぬよ〕
話を聞いているだけで、血の気が引いていくのがハッキリと分かった。
そして信号が赤から青に変わり、人が歩き始めた時にカイは静かに霞に言う。
〔手を離さないように。少しだけなら気を反らせるから〕
向こうから痩せこけた男が向かって来る。
普通に歩いているように見えるが、その目は上下左右と動きが止まる事なく辺りを物色するように動いているのが見える。
1歩また1歩と近づくにつれ晴れているのに関わらず、雨でも降っているような寒さに襲われる霞。
そして横断歩道を渡り切った所で顔を上げ肩を撫で下ろす霞。
だがカイの紅い目はまだ光っていた。
〔……甘かったみたいだね。アレ、ついて来たみたい〕
『えっ?』
霞が振り返ろうとした時、霞の腕を掴むカイの手に力が入る。
〔霞。振り返らないでこのまま走れ。
こうなったら振り切るしかないよ〕
そしてカイと霞は振り向かずに走り出す。
だがその後ろからは、けして速くはないが後を追ってくる一人の痩せこけた男がいた。
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