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カイの、その言葉その声、態度からはさっきまでのひ弱な姿は微塵も感じない。
それは霞だけではなく、悪霊も感じたらしい。
一瞬、ほんの少しだが後退りをしたのがわかった。
《……死神が生者を庇うのか?》
〔違う。庇うんじゃない、「こちらの仕事」に足を踏み入れるなと言っているんだよ〕
普通に遠くから見たら言い争う人間にしか見えない。
だけど違う。
今、霞の目の前にいる二人のうち一人は死神。
そしてもう一人は人間に憑依した危険な悪霊。
『何なのこれ……』
霞の口から出た小さな声を悪霊は聞き逃さなかった。
《今、女の声がした……だが姿が見えないな》
取り憑かれた人間の目は、また声の主を探すように不規則な動きを始める。
《そうか、死神のローブを女に被せたな?
だったら死神と言え、貴様を消し去れば女は私の物だな!!》
そう言葉を発した瞬間に、男の目は白目になり、口から泡を吹き、体が痙攣をし始めた。
それを見た霞は、半泣きになりながら自然と口に手を当て声を押し殺すが震えは止まらない。
『(助けて助けて助けて助けて助けて助けて……)』
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