40人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
口に手を当てたまま目をつぶり、助けてと心の中で連呼する霞。
その時、カイは片手だけで軽々しく大鎌を悪霊に向け口を開ける。
〔行き場を失い現世に留まり、様々な負の感情に取り込まれたその醜い魂を、今冥府へ送る。
怨むなら、死神に牙を向けた魂(自分)を怨むんだな〕
そして悪霊が動くよりも先に、死神の大鎌が勢いよく男の頭上の空を切る。
〔そうやって何人もの人間に憑依して魂を喰い散らかして来たんでしょ?
遅すぎるが、冥府へ行って閻魔大王から厳正なる裁きを受けるんだね〕
カイの口調は元に戻っていた。
男の体は地面に倒れ込む。
その男からは、さっきまで発していた悪霊の気配は完全に消えていた。
〔ああ、冥府神に絶対に怒られるよな~〕
カイはぼやきながら霞の傍へ行きローブを取る。
そこには、泣きながら体を震わせている霞がいた。
〔人間は泣き虫なんだね〕
霞は目を開け顔を上げると、男が倒れている。
それを見て表情を変える霞。
〔殺してないよ。
さっき言ったじゃん、俺は邪悪な死神じゃないって。
獲った魂は悪霊になった魂だけ、あの人間の命の蝋燭はまだ消えてないし。
でも悪霊に憑依された事で数年くらい寿命は短くなってるけどね〕
霞は泣きながら声を振り絞るように言った。
『やっぱり…私って不幸』
最初のコメントを投稿しよう!