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駅近くにある新しいとは言えないが物件的には良物件のアパートの一室。
その部屋の真ん中で膝を抱える霞がいた。
今までの事を思い出し泣いていたのか、目の周りは赤く腫れ上がっている。
『……ついて来ないでって言ったのに』
そう言った後、玄関の外側から声が聞こえた。
〔俺は死神。一度狙いを定めた魂は何処に居ても瞬時にわかる。
それにさっきみたいに「よそ者に立ち入られる」のは死神にとって嫌な事だからね〕
『もう嫌!! いきなり死神が現れたり、悪霊に追いかけ回されたり、いままでだって良い事なんて一つも無かった!!』
〔……だから死にたい?
自らの命を捨てる事が出来るのは生者のみが出来る特権。
だけどね、生きているからこそ出来る事は沢山有る。
けど、命を捨てた者は死んだ先何もする事は出来ず、何も残らない。
でも、君は今生きている。
これから先、良い事があるかも知れないよ。
死神の俺が言うのも何だけどさ、自らの命を最後まで全うしない生者は間違いなく生前にの記憶を探っても何も残ってはいない。
けど、死ぬのが解っていても最後の最後まで自らの命を完全に全うした生者は必ず何かを残し、良かったと思える事が出来るものなんだよ。
俺は君の魂を獲りに来た死神。
だけど君の命の蝋燭の火は消えてはいない。
だったら、いつになるか解らない君の最後の日まで、命を狙うよそ者から俺が命を護ってやる〕
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