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だが、普通にしていれば可愛いのだ。
町を歩いていれば、声をかけられる確率は100%と言ってもいい。
だが最近、不幸の連続で三年付き合っていた彼氏と別れた。
その理由……
「お前と居たら俺まで不幸になるから別れよう」
普通なら何か反論みたいな事も言えるが、それを持ち出されたら反論する事も引き止める事も出来ない。
だって間違いないもん。
それを思い出し、時たま何かを振り払うように頭を横に振りながら会計を済ませ歩いていると突然声が聞こえてきた。
『あのー……』
『はい?』
声がした方に振り向いたが誰も居ない。
『あれ? 今声が聞こえた様な……』
『あのー、俺の姿見えますか?』
訳が分からない。
確かに、ハッキリと声が聞こえるが声を掛けた様な人はいない。
いや、通行人はいる。
悪戯?
いやいや、見知らぬ人にいきなり悪戯するアメリカ人のようなユーモアのある人は近くにいない。
霞はヨロッと洋服店のガラスに片手を付き、頭を横に振りながら呟いた。
『ふっ……とうとう私、不幸の連続で幻聴が聞こえる様になったのね…ふふ…ふふふ……不幸だわ』
行き交う人が、不幸という名の黒いオーラを放っている今の霞の姿を見て、遠ざけるように歩いているのは言うまでもない。
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