想いを巡らせど

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   そういえばその頃からだろうか、現実の時間を薄く感じるようになり始めたのは。  薄いというのは、その体感時間や感覚のこと。  端的に言えば、夢が充実しているあまり、現実に重点を置かなくなっていったのだ。  学校に行くこと、食事をすること、排泄すること。  義務とも言えるそれらを、ただ盲目的にこなしていくだけの日々である。  寝る間も惜しむという言葉があるが、それの逆。  起きてる時間が惜しいと、あらゆる予定を排除してまで寝るようになっていったのだ。  夢中毒とでも言うのだろう。  現実では辛いことが溢れ、飽和する。  辛いと嘆くことすら叩かれる世の中で、辛さは普通になっていく。  さも辛いことが辛くないと、自分たちを騙すように。  でも夢の中は違う。  そこでは、辛さのない快楽を自由に貪れるんだ。  男性では絶対に辿り着けないような快感の果て。  そんなのを見せつけられ、感じさせられ、求めないはずがない。  次第に夢に溶け込むことが生きる魅力に変わり、意義に変化していく。  必然。  当たり前のようにシフトしていった。  疑問は懸念する間もなく霧散する。  だから現実は薄くなった。  今ではもう、夢に入る前にどんなことをしていたのかさえ思い出せない。  全ての現実が霧掛かったように曖昧になり、まどろみへと消えゆく。  だから、この夢しかない。  夢に取り憑かれることが、生き甲斐になってしまったんだ。  
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