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その夢の情景、状況はよく覚えている。
それを頭に思い浮かべるのは赤子の手を捻るよりも容易い。
二桁にも及ぶ回数だけ毎日見続けていれば、覚えて当然だろう。
場所は、窓から見た限りでは、郊外に建てられたマンションの一室。
部屋は一般的な内装だ。
そこは八畳ほどの広さを持ったフローリングの洋室で、形は長方体。
壁紙は、老朽からやや黄ばんで見える白で、天井には円形の蛍光灯が部屋を照らす。
短い辺の壁に青色のシングルベッドが寄せられており、対面には内開き扉。
ベッドから見て左側の長い辺には勉強机、本棚と藍色のカーテンに閉められた窓が並び、反対にはクローゼットが備え付けられている。
クローゼットの横には、全身をゆうにうつせるだけの姿見。
それらとは重ならぬよう、カーテンとやや薄くも同色の色彩をしたカーペットが床にある。
挙げられるのはこれくらいなもので、いわゆる特色のない部屋というやつだろう。
……先にこの部屋を想像するのが容易い理由として「二桁も同じ夢を見たから」と挙げたが、正確にはそれだけではない。
夢の中のこの部屋が、現実の自室と酷似しているためもあるのだ。
部屋の広さや大ざっぱな家具の位置は全く一緒であり、窓から覗く景色も同様。
細かなもの――クローゼットの中身が違ったり、本棚の漫画が男向けから女向けのそれになっていたりなど――を除いて、全部が一緒になっている。
だから夢の中をイメージする作業は酷く容易なんだ。
子供の頃からさほど変わらぬ部屋を思い出せばいいだけなのだから。
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