48人が本棚に入れています
本棚に追加
またこれが恋心とはっきりしないのは、生まれてこの方恋愛というものに疎い生活をしてきたからだ。
もしこれを恋心と言うのなら、生まれて初めて抱いた恋愛感情と言うことになる。
小学校から高校まで共学で過ごす生活の中、良いなと思う子はいても、それが恋する気持ちに繋がることはなかった。
ただその子の見た目、あるいは性格に対する感想があるだけで、恋愛沙汰になろうとは思えなかったからだ。
そのためか、今となっては良いなと思った子の名前――いや顔すら思い出すのが難しい。
本当に良いなと思ったのかと、その話をした友人に笑われたほどだ。
けど、夢の中の女は違う。
確かな感情ではない。
だが、何か特別なものを夢の中の女に感じる。
親近感――他人とは思えない親しみの感情。
やはり毎日同じ夢を見続け、その部屋が現実の部屋と酷似しているからそんなことを思うのだろうか。
今では家族よりも近しい人物だと思ってしまうほどである。
だからきっと、これは恋に違いないんだ。
だが、冷静に考えればこれほど虚しいことはない。
これはたかが夢であり、好きになった女は現実に存在しないからだ。
惚れた痩せすぎの外見は脳内で生み出されたものに過ぎず、中身に至ってはありえない。
もしこの恋が叶ったとするなら、これほど自己完結しているものはないんだろうなと思う。
それでも消えてくれないのだから、酷くやっかいではあるのだが。
最初のコメントを投稿しよう!