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その夜、亮介は部屋の奥にある棚の、そのまた奥にあるメモ帳を手にとった。
多少、ホコリは被っていたが、中身にお目当ての電話番号はある。
裕子の番号。
二宮先生、と書いてあったのを横目で見ながら、亮介はそっとボタンを押した。
「もしもし…?」
尋ねるような声だった。
不安を交える声だった。
期待を交える声でもあった。
「あ…オレ、亮介」
「あっ…亮介くん?ごめん、登録してなかったや」
彼女が電話に出たのはいいが、何を話していいか分からない。
彼女が続けて言う。
「…どうしたの?」
「……いや、今日会ったから」
「ああ…」
心臓がドキドキする。
震えてくる。
体も心も声も震えてくる。
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