呆気ないあなたの死を嘲笑うことなど出来るわけもなく

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真尋はよく笑う。 何が楽しいのか分からないけど、笑う。 顔をくしゃくしゃにして大きな声で肩を揺らしながら。 それで、僕の頭を撫でるんだ。 暖かいおっきな手で優しく撫でてくれるのだ。 僕はそんな真尋が大好きなんだけれど、彼はたまにとても危ない目をするときがある。 窓の外を眺めてる時、焼却炉の燃える炎を見つめてる時、料理中に包丁を握った瞬間。 でもそれは一瞬で、次に見た時はいつもみたいに笑ってる。 だから、僕はあまり気にしないようにしていた。 真尋が怖い。 そんな風に思いたくなかったから。
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