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母親は科学者、父親はエリート銀行マン。
そんな二人の間に私は生まれた。
幼く、泣くことしか出来なかった私に与えられたのは抱擁や温かいミルクなどではなく、一台のお世話ロボットだった。
お世話ロボットはよく面倒を見てくれた。
お腹が空けばミルクを作り、おしめの替えさえやってくれる。
そんな支えもあり、私はハイハイから立って歩けるようになった。
初めは立つのが精一杯だった私も少しずつ歩ける距離を伸ばし、少し、もう少しとママの下へと歩いていった。
「ママ」
辿り着いた。ママの足下へ。
褒めてくれると思った。抱きしめてくれると・・・
でも、そんな私を見るママは何か壊れものを見るようで私に触れてもくれなかった。
「ママは忙しいの。あなたにはお世話ロボットがいるでしょ?そっちに相手をしてもらいなさい。」
私が小学生になると、ママはお世話ロボットに新しいプログラムを入れた。
一つは朝起こすように、一つは学校の準備、一つは勉強。
その日から、私には毎日決まった時間、勉強するように決められた。
友達と遊ぶことも出来なくて、急いで帰って勉強。
家の扉を開けると、お世話ロボットが、すでに勉強の準備を済ませていた。
辛かった。でも、それでママが喜んでくれるなら。
そう思って頑張った。
おかげで、私の成績もずいぶん良くって、テストの結果をママに見せた。
きっと喜んでくれる。きっと褒めてくれる。
「ママ、見て。」
「頑張ったわね。あなたならもっと良い点を取れるわよね。ママとパパの子供だもの。」
ある日、珍しく家にはママの友達が来ていた。
私はその間も勉強、勉強。
ママは友達とどんな話をするんだろう?
後ろで見張りのように立っているお世話ロボットにバレないように聞き耳をたてた。
視線は教科書から離さないようにして。
「あれってお世話ロボットでしょ?ずいぶん高かったでしょう。娘さんを愛しているのね。」
「高かったけど、娘には立派に育って欲しいもの。その為にはまだまだ頑張って稼がなきゃね。」
ママは私に期待してくれている。それは嬉しかった。でも、同じぐらい哀しかった。
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