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荒くなりそうな息をなんとか呑み込み、木に隠れる。
足音は近いが、影は見えない。
何故なら今日は雨だ。お日様は一日中顔を出してくれそうにもない。
(…おかげで隠れやすいんだけどな)
腰にかかった安物の剣を引き抜き唾を飲み込む。
これくらいなら雨音が消してくれるだろう。
足音が近くなる。いよいよ自分もここまでか…。
空を見上げても相変わらずの雨。
ため息を外へ逃がし、前を見ると空の雨とは違い風景が変わっていた。
目の前にはガタイの良いお兄さんが二人。
胸に白虎のマーク、敵だ。
「こ…こんにちわ。今日は良い天気ですね」
とりあえず話かけてみたが返事は無い。
ただでさえ無愛想な顔の眉間にシワを寄せただけだった。
「…貴様らに勝機は無いのになぜ戦うのだ。皆殺しとは後味悪いのう」
坊主頭をかきながら言うお兄さん。
返事に挨拶が無かったが声は低く、その風格の厳つさを強めた。
「王様が戦えと言ったらそうなるんですよ」
苦笑いしながら答えてみて、剣をしまう。
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