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勢いで剣を引き抜き相手の剣を防ぐ。
頭上間近の押し合い。力負けは腕の太さで一目瞭然。
だが、こんなところで死にたくない。
負けじと剣の腹を押すが、限界は早かった。
この坊主頭のお兄さん。部下に手は出させず正々堂々。
だが自分ときたら逃げ回り援軍に淡い期待をしている。
意気込みから……最初から負けていたのだ。
自分も負けだろうが逃げられないならば戦おうじゃないか。
剣を傾け相手の軌道をずらしすかさず腹に横蹴りを入れ込む。
「っむ……ぬぅ!」
そのまま軸足を回転させ、剣を相手の首に斬りつける。
俺もやればできるじゃないか。剣をいっそう強く握りしめ、そう思った。
ーーしかし、その剣は弾き飛ばされた。
すぐに体制を立て直した坊主お兄さんはニヤリと笑む。
地面に突き刺さった剣を眺め、目を瞑る。
「じゃあな」
相変わらず低い声でさよならを告げたお兄さん。
振り上げられた手は閉ざされた瞼によって映らなかった。
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