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初めて会った日と同じ、今日も雲一つ無い綺麗な青が広がっている――『青空だ』。
今朝やってた天気予報通り。
僕は休日に彼女と出会ってから、毎日テレビの天気予報をチェックする習慣がついていた。
これはまったくの想像だが、彼女はいつも、晴れの日に傘をさしているだろうから。
晴れの日になると、彼女のことを想ってしまう。
僕にとって天気予報は、彼女と自分を唯一、繋げられる恋の予報なのだ。
僕は一体何を言っているんだ――馬鹿か?
ここのコンビニで買ったものだろうか。
僕は舌打ちした。
だって、ここのコンビニで買ったものなら、僕がレジのときに買って欲しかった。この時間なら、むさいあの店長だ……。
彼女は真新しい傘を、この前とは違い、さすのではなく杖のようにして持っていた。
何に不満を抱いているのか、顔を見ると、口をチョンと尖らせながら眉をひそめていた。
それも頷ける。ここの信号は町で有名な『開かずの信号』と言われていて、なかなか青にならないからだ。
彼女はあろうことか、手元に携えたビニール傘で、脇の信号にある『歩行者横断用』のボタンを、まるで悪びれる素振りもなく、ポチッと押した。
さ、先で?
僕は、こんな女に惚れたというのか……。
帰り道が、いつもと少し変わってみえた――――
END
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