序章【破壊と創造】

4/5
前へ
/365ページ
次へ
  「“ラスタリカ”が言っていたわ。私を救えるのはあなた――ユリウスしかいないと。“ジェイン”がここにいないという事は、あなたなのでしょう? ラスタリカから、“資格”を継承したのは」 「…………」 「ねぇ、答えてよ。お願いだから……私を助けて……っ」  答えられない。“彼女”の悲痛な言葉が、僕の頭の中を真っ白にする。何も考えられない――そして何より、“彼女”にどういった言葉をかけてやれば良いのか分からない。軽率な言葉を零した途端、“彼女”が壊れてしまいそうな気がする。“彼女”にとって唯一の希望――それが僕。“僕”という希望にすがる“彼女”が、怖く思えて仕方がない。  だから僕はただ、“首を横に振った”。僕には君を救う事――殺す事は出来ない。暗に、そういった意味合いをふくみながら――。 〈SIDE:ナギ・シャルセ〉  私の目の前にいるのは、装飾が施された白一色の服を身に纏う金髪蒼眼の少年。そんな彼が、“首を横に振っている”。私には、それだけで十分だった。私の中で崩れ落ちてゆく、希望と期待。その代わりに築き上げられたのは、絶望と失意。初めから分かっていた。“人間”という生き物は、いつもそう。  自分の事しか考えず、他の不幸なんて一切顧みない。彼もついこの間まではその自分勝手な人間“だった”のだから、仕方ない。私はこの世界が嫌い。ユリウスの事は今、大嫌いになった。そして――私にこんな運命を押し付けた“彼女”は、もっと大嫌い。何より、誰よりも。だから――。  
/365ページ

最初のコメントを投稿しよう!

738人が本棚に入れています
本棚に追加