小6の春

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里衣子の両親は、娘を私立の中学校に入学させようとしていた。 その気持ちは嬉しいものだったが、里衣子はすぐ断った。 「気持ちだけ貰っとくよ。まだ美樹達と離れたくないし。地元の中学に行くよ。パパとママは、そのお金で旅行でも行ってきなよ。」 ほんの軽い感謝の気持ちだった。 せっかくの貯金なんだから、もっと自由に使ってもらいたくて。 と、言うよりも―。 里衣子は自分にそんな大金を使ってもらう価値なんて無い、と思っていた。 成績は中の上程度、私立なんて贅沢すぎる。本当にそう思っていたのだ。 「温泉でも行って疲れとってきなよ。」 本当に何も考えずに―。 里衣子は一生後悔する提案をしてしまったのだった。
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