2人が本棚に入れています
本棚に追加
「この世界を小さなパズルに分解して、その個々の要素にどれだけの必要性を秘めることになると思う?」
訳の分からないことを、と彼女は鼻でけなし笑う。
それも無理はない。
僕は彼女の事を何一つ知らない。
知っているのは、華やかとも言えない極非凡なその外見。
彼女からしてみれば僕という存在は不審者、と定義されているだろう。
まぁ、それも当たり前だ。
彼女はただ此処を通りすがっただけだから。
僕の事を彼女は何一つ知らない。
「何も無くなるのかな。一部が大切で、他は要らなくなるのかな。」
「なんでよ、パズルなら全てが無いとその形状が無し得ないじゃない。全てに意味があるのよ。」
少しだけ躍起になって噛み付いてきた彼女。
僕は愚かしくてただ笑う。
だって、その先の答えなど誰も知らない。
パズルが必ずしも全てのパーツが必要である筈も無い。
欠けたものが美しいと言う人もいれば、満たされた世界が美しいと言う人もいる。
彼女と僕のように。
だが、
「満たされたら、君達は―――じゃないか」
彼女のはかなくも脆いその幻想を打ちのめすと、彼女はクスクスと笑い続ける僕を、睨みつけて去っていった。
人は真実を突き付けられるといつも怒り反発するが、結局最期には真実を認めうるしかないのだ。
「そろそろ次へいこうか…獅子王。」
返事は、無い。
最初のコメントを投稿しよう!